今回もたいへんお世話になり、ありがとうございました。 お願いしました２点は、たまたま同年代（１９７０年代前半）の同じイタリア製、そして持ち手のコルク芯が折れてしまっているという共通点のあるハンドバッグ達でした。 そして、片方はベージュのタートル皮革製、もう一方は黒のクロコダイル皮革製だったのですが、そのコンディションには大きな差がございました。

クロコのバッグは、保管状態にも恵まれたらしくポロサスらしい艶やかさを保っており、持ち手さえ治ればすぐにでも活躍できそうに思えました。 実際、御社でバッグ本体に相応しい皮革で丁寧に持ち手を作成していただき、細かな不具合まで治していただいたうえで磨き上げられて帰宅したバッグは、４０年程前に作られたとは思えない美しさです。 大事に使い、何十年か後には娘に渡してやりたいと思っております。

しかし、タートルのバッグは皮革の乾燥が触れるとカサカサな状態まで進み、なおかつ長期の保管の悪さによる茶色のシミが広範囲にできてしまっており、持ち手を修理しても現役のバッグとして活躍できるかはかなり微妙と思われる状態でございました。 （タートル皮革はクロコ皮革に比べて薄いと聞いておりましたが、それを否応なく実感いたしました） そして残念に思いつつも最低限の手入れをしながら細部を確認したのですが、最近のバッグにはない雰囲気のデザインと丁寧な作りに、やはり諦めきれない気持ちになりました。 そこで、プリマベーラ様に実物を見て頂いたところ、現役復帰できるようメンテナンスをしていただけるとのお返事をいただき、お願いして１か月半程で帰宅したバッグは、見事な仕上がりでございました。

①シミが隠れるギリギリの色まで調整したベージュ色で全体に色のせをしていただいたため、新しいバッグのようにも思えるほどでした。

②簡単に「持ち手交換」と言いましても既に入手不可能なタートル皮革であるため、様々な方法をご検討下さり、最終的には「牛革の型押しでタートル皮革と似た模様の白色の物を探し、本体の色のせと同じ色にしたうえで従来の持ち手と同じ形状に作成し取り付ける」という方法で、違和感のない仕上がりを実現していただきました。

③栄養剤を入れてから色のせをし、そのうえで艶やかに磨き上げて頂きましたので、皮革の乾燥も全く気になりません。

④内側にも薄茶色のシミが出てしまっていたのですが、この部分も綺麗に色のせしていただいておりました。 これなら娘が振袖を着るときに持たせても映えることだろう、と思わされるバッグを嬉しく拝見しております。

今回の２点の帰宅したバッグを眺めて改めて感じましたのは、御社のバッグへの愛情とプロとしての心意気でございます。 正直に申しまして、クロコダイルのバッグの方は、他のお店でも修理を引き受けてもらえたと思います。 （出来上がりは別として、というのと、大事なバッグを預けらる程信頼できるお店が他にあれば、という前提がもちろん必要なのですが…） しかし、タートルのバッグを引き受けてくれるようなお店は、プリマベーラ様以外にはなかったであろうと思います。 コンディションも悪くブランドでもない、それこそ「直すより新しくお買いになった方が宜しいのでは？」と言われてもしようがない代物でしたので、たいていのお店では見積もりをお願いするにもコチラに勇気が必要となったことでしょう。

メールでの相談段階から当方がこのバッグの何処に未練を感じているのかを的確に把握していただき、適切なアドバイスとともに諦めなくても良いという安心を与えられた、これは御社が自社のメンテナンス技術に絶対の自信があるからこそでございましょう。

今回お願いしたようなタイプのエキゾチックレザーのバッグは、晴れの場に持つことも多いため、出番は少ないながらもここ一番ではその存在感が必要とされます。 このような年代物を御社のメンテナンスにより現役とし楽しませていただけることを、本当にありがたく思っております。 工房の皆様にも宜しくお伝え下さいませ。

東京都　W.M様